日本武道学会第49回大会は、9月7日〜8日に皇學館大学(三重県伊勢市)で開催されます。剣道専門分科会では、下記の日程で、総会および剣道専門分科会企画を開催いたします。今回は、湯浅晃先生(天理大学)にご講演をお願いしました。是非ご出席いただけますよう、お待ち申し上げます。

     テーマ:「武道の伝統性について考える」
            A Consideration of Budo Culture

     日 時:平成28年9月8日(木)14:00〜15:30(予定)
        (14:00〜15:00 ご講演 15:00〜15:30 質疑応答)

     場 所:皇學館大学 7号館2階721教室

     講 師:天理大学 教授  湯浅 晃 先生

     司 会:大保木 輝雄(剣道専門分科会会長)、酒井 利信(筑波大学教授)

 2006(平成18年)12月に改正された「教育基本法」・前文において、我が国の「伝統を継承し、新しい文化の創造を目指す教育を推進」し、「未来を切り拓く教育の基本を確立し、その振興を図る」ことが改正の趣旨であると謳われている。そして、この教育基本法に則って、2008(平成20)年3月に「中学校学習指導要領」が改正され、保健体育科において「武道」は必修化されたことは周知のことである。この一連の教育制度改革における我が国の伝統や文化の重視の姿勢は、グローバル化した世界状況のもとで国際的な協調・協力関係を築くためには、異文化に対する理解が必須であること。また、その前提として、自国の歴史や伝統・文化の正しい理解が是非とも必要であるという主張に基づいている。
 このような伝統重視の方向性は、1987(昭和62)年の教育課程審議会・答申においてすでに示されており、これを受けた1989(平成元)年改正の学習指導要領において、従前の「格技」から「武道」への運動領域名の変更がなされ、「我が国固有の文化としての特性」を生かした指導が求められた。さらに遡れば、戦後の武道復活、日本武道館の創立、大学における武道学科の創設、日本武道学会の設立など、「武道の伝統性」への回帰的な眼差しは、私達の目に見えにくく、深い地場において照らし続けられていたといってよい。
 戦後に限らず近代以降、「武道」の復活と振興のキーワードは「伝統」であったように思う。「日本文化には伝統がある」、「伝統はすばらしきものである」、「伝統文化こそ日本人のふるさとであり、心の原点である」。だからこそ、「伝統を守り、次代に伝える責務がある」など、郷愁をもって訴える言説に支えられて武道は存続してきた感がある。
 では、「そのように訴える人は、はたして本当に伝統を承け継いでいるのか?」、「伝えようとしている伝統を、そのまま次代の人々に承け渡してよいものであろうか?」、「そもそも、伝統とは何なのか?」、これらの問いについて、剣道専門分科会の皆さんと共に考えてみたいと思う。

 


日本武道学会剣道専門分科会 Division of KENDO, Japanese Academy of BUDO