令和元度日本武道学会第52回大会剣道専門分科会企画
<講演>
「人口減少時代におけるスポーツ」
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令和元度日本武道学会第52回大会において、剣道専門分科会企画を下記の日程で開催させていただきます。 皆様の奮ってご参加をお待ちしております。
【講演要旨】
P.F.ドラッガー(1985)は、著書『イノベーションと企業家精神』において、イノベーション(革新)の機会として、@予期せぬことの生起、Aギャップの存在、Bニーズの存在、C産業構造の変化、D人口構造の変化、E認識の変化、F新しい知識の出現、の7つを挙げている。 最近10年間における我が国の社会情勢をみると、SNSによる若年世代のコミュニケーションスタイルの変化、人工知能(AI)の発展、女性の活躍促進や働き方改革、共生社会の推進といった新たな政策の導入、集中豪雨や大地震の多発、公共施設・交通などの社会資本の老朽化、いじめや虐待などの子供の安全問題、認知症や虚弱をはじめとする高齢者の介護問題、地域経済の縮減など、様々な社会課題が顕在化している。さらに2020年以降、我が国では人口減少と高齢化が加速することが明らかになっている。 こうした中で、スポーツ環境に目を向けると、指導者やスポーツボランティアの高齢化、スポーツ施設の老朽化、スポーツ参加者の固定化、組織的スポーツから個人スポーツへの人々のスポーツ参加形態の変化、eスポーツの台頭、スポーツ団体のガバナンス強化など、多様な変化や課題への対応が迫られている。これら社会及びスポーツの変化と、P.F.ドラッガーが指摘するイノベーションの機会を照らし合わせると、スポーツもまたイノベーションの時機を迎えていると考えられる。 企業におけるイノベーションには、製品とサービスにおけるイノベーション、市場におけるイノベーションと消費者の行動や価値観におけるイノベーション、製品を市場にもっていくまでの間におけるイノベーションがある(P.F.ドラッガー,1973)。本講演における主題は、これからのスポーツの革新はどこにあるのかである。この手掛かりを探るため、本講演では人口減少・高齢化時代に焦点を当て、ここ約10年間における我が国のスポーツ政策の変遷とスポーツ政策研究を概観し、近年の国のスポーツ政策革新を紐解く。また、間近に迫る人口構造の激変におけるスポーツの意義や可能性を再考し、政策実行者の立場からこれからのスポーツに求められる革新について考えたい。
[講師略歴]
1965年、北海道生まれ。筑波大学体育専門学群卒業、筑波大学大学院修士課程体育研究科修了、筑波大学大学院人間総合科学研究科スポーツウエルネス学位プログラム(博士課程)修了。筑波大学体育系客員教授。アジアハイパフォーマンスセンター連合チェア。博士 (スポーツウエルネス学)。
東京大学教養学部助手、同大学院・総合文化研究科助手を経て、2000年より国立スポーツ科学センター(JISS)設置準備室。2001年〜2012年までJISSにおいて情報戦略機能、地域タレント発掘事業、マルチサポート・ハウス、ロンドン事務所、国際連携機能などを立ち上げる。超党派スポーツ議員連盟「新スポーツ振興法制定PTアドバイザリーボード」、「今後のスポーツ政策の在り方検討とスポーツ庁設置に向けたPT」有識者会議委員などを務め、スポーツ基本法及びスポーツ庁の制定・創設に携わる。スポーツ庁参与(2017〜2018)、スポーツ審議会スポーツ基本計画部会・スポーツ国際戦略部会などを務め、スポーツ政策に数多くの実績を残す。「スポーツ・インテリジェンス:オリンピックの勝敗は情報戦で決まる(NHK出版2013)」、「競技力向上に向けた情報戦略. 基礎から学ぶスポーツ概論(大修館書店2013)」など、著書多数。
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