第57回日本武道学会弓道専門分科会企画について(令和6年度)
令和6年9月22日(日)に「弓道における弽の持続可能性」を開催します。この企画は、日本武道学会第57回大会の弓道専門分科会企画として開催します。
企画について
国際連合は、2030年までに持続可能な世界を実現するための「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals, SDGs)」を策定している。また、2015年にユネスコが改訂した「体育・身体活動・スポーツに関する国際憲章」では、「持続可能性(Sustainability)」が最重要の原則とされている。
弓道においても「持続可能性」は重要である。特に、弓道で使用される弓具の多くが現在も天然素材から作られている。竹弓は竹と木材で製作され、竹矢には鳥の羽根と矢竹が、弽(ゆがけ)には鹿革や牛革が使用されている。これらの天然素材の中には、環境保護の観点から取引が規制されているものもある。天然素材を継続的に利用する上で、弓道研究者は弓具を取り巻く環境問題から目を背けるわけにはいかない。
例として、鹿革で作られた弽を継続的に使用するためには、弽製作者が安定して鹿革の供給を確保できる環境を維持することが必要である。現在、弽に使用される鹿革は中国、東南アジア、北米、南米、さらには南半球から輸入されているが(弓道具協会,https://kyudogu.jp/history,2024年5月閲覧)、近年の鹿革価格高騰によって弽の値段は年々押し上げられている。
人工皮革といった新素材を用いて弽を製作し、価格を抑えつつ供給を持続可能にするという考え方もある。ただし、現在の全日本弓道連盟の「弓道競技要則」第20条(4)(エ)では、「弽の材質は鹿革とする」(全日本弓道連盟、2014)と記載されており、競技における新素材の導入は妨げられているのが現状である。
このような、鹿革の価格高騰の原因や新素材の使用の可否の問題については、一般には認知されておらず、詳細な現状把握もなされていない。そのため、議論そのものが不足している。
さらに後継者の育成も、弽の持続可能性を左右する大きな問題である。後継者問題についても弓道研究者や一般の弓道家が知る機会はほとんどない。
そこで、本企画では弽に焦点をあて、弽製作者から弽製作を取り巻く現状、新素材での弽製作、後継者育成などに関する諸問題について講演をいただく。そして、弽の持続可能性について議論を深めることを目的とする。
日時 :令和6年9月22日(日)14:30~16:00
開催方法 :対面開催(後日、弓道専門分科会会員には企画を撮影した動画を配信予定)
対面開催場所 :九州産業大学 3404
予定
:
①企画・趣旨説明(弓道と環境問題に関する概説) 五賀友継(国際武道大学)
➁弽を取り巻く環境と諸問題 征矢幸一(有限会社 征矢弓具製作所)
③質疑応答
司会
:原田隆次(国際武道大学)
なお、本年の日本武道学会第57回大会は9月21日(土)ー22日(日)に九州産業大学で開催されます。詳細については、日本武道学会HPをご覧ください。
http://www.budo.ac/