第58回日本武道学会弓道専門分科会企画について(令和7年度)

 令和7年8月31日(日)に「弓道からみた日本と中華圏域の文化交流」を開催します。この企画は、日本武道学会第58回大会の弓道専門分科会企画として開催します。

企画について

 本報告は、文化人類学的視点から、日本および中華圏(中国大陸、香港、台湾)における弓道と射礼文化の伝播と再興の実態を明らかにすることを目的とする。講演者は2017 年より神戸にて弓道を学び始め、以降、国際シンポジウム等の機会を活用し、各地の弓道場および関係者への訪問・聞き取り調査を行ってきた。
 2018 3 月には、香港中文大学において「中国射礼与日本弓道的教育伝承」と題する講演を行い、香港弓道場および同協会を訪問した。さらに、珠海市では北京師範大学珠海分校の求真弓道館にて、内藤敬氏の弟子である王富曦氏より案内を受け、北京師範大学―香港浸会大学聯合国際学院では、弓道部監督の李軍陽氏から中国伝統弓術の弓道場「一陽射圃」の建設経緯と自身の内藤氏から弓道を学んだ学習歴についての証言を得た。深圳市では中国正鵠会会長の胡震環氏に会い、同会設立と国際弓道連盟との交流について聴取した。
 続く4 月には、筑波大学蓬矢館を訪れ、松尾牧則氏および大学生の稽古を視察したほか、入江康平氏と面会し、2017 年に江蘇省徐州市で行われた「中国第一回礼射国際学術会議」への日本側の参加状況について確認した。6 月には山東省済南市の奎虚射圃を訪問し、鄭海廷氏より、北京師範大学―香港浸会大学聯合国際学院で内藤氏から弓道を学んだご子息の影響で弓道を学び、中国伝統弓術の弓道場を開設した経緯など聞き取り調査を行った。
 8 月に中国の指導学生たちを連れて日本の弓道場を見学し、日本の学生達と交流してきた内藤敬氏と大阪で面会し、1995 9 月以降、天津市と珠海市で弓道場を建設し、弓道を教えてきた長い経歴などについて聞き取り調査を行なった。10 月末から11 月初旬にかけては、北京市内の五輪館および澄明弓道場を訪問した。澄明弓道場の指導者である許博堯氏は、日本の帝京大学弓道部出身であり、日本と中華圏における人材交流の一端を示していた。201911 月には、中国伝統弓の第一人者・徐開才氏へのインタビューを実施し、続けて中国社会科学院世界宗教研究所にて「日本的武道与宗教:以弓道為例」と題する講演を行った。さらに、清代創業の弓具店「聚元号」の第十代当主・楊福喜氏にも取材し、伝統弓文化の復興動向を把握した。  
 同年12 月には台中科技大学での学術会議で発表を行い、台北市内の蔵月弓道館を訪問し、台湾における弓道文化の定着状況も確認した。
 以上の調査から、日本の弓道文化が古代中国の射礼に由来しつつ独自に発展してきたこと、そして現在では中華圏各地における伝統射芸復興の一因となり、文化交流と相互理解の媒介となっていることが明らかとなった。

日時                 :令和7年8月31日(日)14:30~16:00

対面開催場所   :法政大学多摩キャンパススポーツ健康学部棟 103

予定                :
①企画・趣旨説明                   五賀友継(国際武道大学)
➁講演「弓道からみた日本と中華圏域の文化交流」    秦兆雄(神戸市外国語大学)
③質疑応答

司会                 :原田隆次(国際武道大学)


 なお、本年の日本武道学会第58回大会は8月30日(土)ー31日(日)に法政大学(多摩キャンパス)で開催されます。詳細については、日本武道学会HPをご覧ください。
https://www.jabudo.ac/news/news2/
2025年7月21日